Paradox#

思考ノートの切れ端⸜( •ω• )⸝ その時の心境や状況によって様々な角度で切り込んでいることがしばしば。

らカ界セル或Noスるヰウ

 

 

お気に入りだったリップが切れてしまった。

買いに行かなくちゃ。

 

あんな事があったのに、冷静にも正常に回る思考回路。


今日もあたしは息(生き)てる。

 

その事実だけが、今は無機質にあたしの身体を動かす。

 

お父さん、お母さん。

置いて行かないで。


もっと、舞夏(まいな)って名前を呼んで。
頭を撫でて欲しかった。

 

テストで100点、この前取ったんだよ・・・
良くできたね、って褒めて欲しいの。

 

どうしたら戻って来るの?

あたしが消えたら、一緒に暮らせる?

 

「…………っ」

 

嘘だよね。


ねぇ、そこで笑ってないで。

 

あたしを抱き締めてよ。

 

いつの間にか、居なくなった二人。
あたしだけ、生きてた事実。

 

どうしてよ……っ!
どうして、二人は帰って来ないの?

 

お母さんの自慢の肉じゃが、
この前、やっと同じ味かなっていうのが出来上がったんだよ。

 

お父さん、美味しいって言って食べてよ。

 

ねぇ。

 

あたしは、二人を奪った……
あたし達の未来を無機質にも奪った犯人が許せない。

 

どうしてこんな事になったの?

何をすれば、良いの?


これから、どう生きてけば良いの?

 

独りで、どうすればいいの・・・

 

朝になって。

目を醒ましたら、ガランとした静かな空間で。

 

呆気なく崩壊してく、つい最近まで当たり前のようにあった幸せ。
ぶつけようのない想い。

 

拠り所すらも失って、底のない暗闇の中を彷徨ってるの。

 

・・・あたしも、時間の問題?

 

テレビから連日のように増える、絶えることの無い数字が流れる。

 

鼻でハッと笑う。

 

受け入れようの無い、事実。
幻想に縋ったって、二人は返ってこない。

 

無機質な家は、無機質なままで。

 

―――ウイルスをあたしは許せない。

 

あたし達から無慈悲にも生命を奪ってくウイルスが。

 

残り数日。
あたしは、どうすればいいんだろう。

 

どう生きて行けば、いいのだろう。

 

世の中の崩壊。
何をしても……もうこの際、意味がない。

 

人はこういう時に、“絶望”って言葉を使うの。

 

安易だとしても、そう思う事しか脳が無いの。

 

あたしたちは…

 

信じられない、陣地を越えた真実には、為す術もなく、喚くだけなの。

 

こうなる前に、何か出来ることは無かったのかな。

 

もう、分かんないの。
為す術がないの。

 

・・・だけど。

 

どうしてかな、こうしてる今も。

 

この地球上の中の何処かであたし達の中から誰か、生命を落としてる。


そうして、また何処かに居る誰かは祷ってる。

 

誰かにとっての、描く終息のシナリオが……皆、同じでは無いように。


今日も、あたし達はそれぞれの生を全うしてる。

 

流れる死亡者の数に慣れてしまった瞳に、涙が零れる。

 

・・・慣れる訳、ないじゃん。
感じないようにしてるだけ。

 

無関心のフリをしてるだけ。

 

そうしないと、耐え切れそうにないから。

 

あたしは…身近な人達が居なくなったから、それが出来なくなった。

 

通用しなくなってしまった。

 

他人行儀なんて、もう・・・無理だよ。

 

出来ない。

 

こうしてる今も、空を見上げれば。
何事も無いかのように綺麗な夜空。
星が瞬くの。

 

それが、最高の皮肉かのように思えた。

 

(・・・こうしてる今この瞬間も、誰かが生命を落としてると云うのに、って。)

 

ある時から付け始めた、体温記録。
あたし自身も、もう…後が無い。

 

―――予感がする。

 

あと、少し。
あたしに出来る事があるとしたら。

 

打ち込む。抽出して、残す。

 

 

 

タイトルは、【拝啓、未来を継ぐ君達へ――――】。

 

 

 

此処は、過去のあたし達が考えられる中で、一番最悪なシナリオの世界。

 

それでも確かに、あたし達はこの星で生きていました。

 

映像を此処に収める。
2020年より、愛を籠めて。

 

 

 

 

―――【To.一番最悪なシナリオの世界より】。

 

 

 

 

 

2020.03.31. 初稿